訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2009-07-06

親父の一番短い日

帰国日には空港へ次女を呼び出した。
この日は時差の関係で一日が22時間になり、十分に睡眠時間をとれない。
翌日からの仕事を考えると、あまり動き回って体力を消耗したくないので、待ち合わせの5時間前には空港入りし、本を読みながら静かに待つ。
少し早くに現れた次女に後ろから肩を叩かれて再会、食事をしながら話をしようと、空港内の食堂に入る。

昨年ここで会ったときには、結婚を考えている相手がいるといっていた。
「あれからどうした? もう結婚したのか?」
「はい。いや、まだです」
「ん? どっちなの?」
「来週の30日にします」
「えーーっ!」

毎年、6月と7月をまたいで会いに来ているので、僕の滞在中に式を挙げるつもりだったらしい。
今年に限り仕事の都合で1週間早めたのが裏目に出たのだ。
あーっ、悔しい。
娘の結婚式で「瀬戸の花嫁」をタイ語で熱唱するのが長年の夢だったのに、またもその機会を逃してしまった。
それも自分から。

「で、その彼氏をなんで連れて来ないんだよ」
「この時間は、まだ仕事です」
「そうか。ま、連れてこなくてよかったかもね。もし、ここに来てたらぶん殴ってたよ」
「どうしてですか?」
「大事な娘を奪っていく奴だからだよ」
「フフフ」

ともあれ、相手の男がどんな奴かは非常に気になる。
写真はあるかと聞いても無いと答える。
「嘘つくんじゃない、ケータイ出してみな」
残念ながら、次女のケータイは超旧式で、カメラ機能も待ち受け画面もついてなかった。
相手の年は30だというが、次女ももう25だから、ま、不釣合いってことはないか。

「でも、本当は、一緒にお父さんに会いに来ることにしてたんですよ」
「それならどうして来ないの?」
「お父さんがランプーンで、私のお母さんに、日本に帰るのは明日だって言ったんですよ。お母さんが連絡してきたから、そのつもりで明日の仕事を休んで待っていたのに」
しまったーーーっ!
ランプーンの次女の実家で帰国日を聞かれたとき、確かに適当に答えた覚えがある。
筆談につかったメモ帳には、確かに「25」という数字が書いてあるし。
一日まちがって教えたのも、すべて自分のせいである。

「ごめんね、ごめんね。彼にもよーく謝っておいてくれる? くれぐれもよろしく言っといてね」
繰り返し頭を下げて謝るしかなく、ぶん殴るどころか、会う前から娘婿に負い目をつくってタイをあとにしたのだった。