訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2010-08-25

散髪

サコンナコン県の南のはずれ、県境から10キロほど入ったところに長男の家がある。
いったん市の中心部に入ってからここまで引き返してくるのは大変なので、通りすがりに立ち寄って、もし留守だったら今年の対面はあきらめるというつもりだった。
うっかり見落としてしまわないよう、スピードを抑えて走っていると、見覚えのある家が見えてきた。
毎年、市街方向からしか訪ねたことがなかったので、勝手知った道でも反対から走って行くと意外と判りにくいのである。
去年は暗くなってからということもあって、数キロ通り過ぎてから気がついたのだった。

家の前に車を停めようとしたら、ちょうど庭から出てこようとしていた3人をふさぐ形になってしまった。
一瞬、来客だったのかと思ったが、3人は長男とその両親だった。
母親はバンコクで、父親もどこだかへ働きに行っていて、ここ数年は一人暮らしの長男だったから、両親同時に交えて会うのは、実は初めてのことだった。
聞けば、サコンナコンの町まで一緒に出かけるところだったという。
つまり、到着があと20秒遅れていても家は無人になっていて、面会は一年先送りになるところだったのである。
これもブッダのご加護というか、あるいは休憩も取らずに峠をカッ飛ばしてきた甲斐があったというべきか。

軒下のベンチに腰掛けてしばらく話をしたが、長男はあいかわらず近所の子供たちにゲーム機を貸すゲーム屋を家の裏でやってるらしい。
こんな田舎では店を大きくというわけにもいかないだろうし、何かちゃんとした仕事につくでもしてくれないと、いつまでも不安で仕方が無い。
ただ、昨年会ったときの、顔の半分を隠すような前髪をきれいに刈っていたのは嬉しかった。
昨年の別れの言葉が「見苦しいから、絶対その髪切っちゃえよ」だったので、今回は「よく切った。さっぱりしていいよ」と褒めてやった。
もっとも、僕の忠告を聞いてというよりは、この暑苦しい国で一年間あんなヘアスタイルは維持できなかったというのが真相だろう。
それとも、この一年の間に出家でもしてたのだろうか?
年齢的には一番出家しやすい年頃だが、それに気づいたのは長男の家を出てからだったので、直接確認することはできなかった。