訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2011-08-28

グラミン銀行は貧困救済の特効薬か?(3)

【実は儲かっていない】
グラミン銀行による融資の成功例として次のような事例が紹介されることがある。
融資を受けた女性は携帯電話を買い、近隣の電話を持たない人に有料で使わせる。
こうした電話ビジネスでちょっとした成功を収め、借金も無事完済した。

これも昔の日本を思い出してみよう。
固定電話がとても高額だった昭和の中期、電話のある家は隣近所に当たり前のように電話を貸していた。
今では考えられないが、そのために電話は玄関かその近くに設置するのが普通だったのである。
しかし、それで儲かった、なんて話は聞いたことがない。
なぜなら、それで儲かるのなら、誰もが借金してでも自分の家に電話を引くからである。

先のバングラデシュの事例でいえば、Aさんがそれで成功するなら、Bさんも同じことを始めるはずである。
しかし、そうすればたちまちその地域でのシェアは半分になる。
Cさんが参入すればもはや事業として成り立たないかもしれない。
つまり、これは独占事業でなければ成功しないビジネスモデルなのである。

確かに、Aさんが地域でこの事業を独占できていれば、彼女はビジネスの成功者といえるかもしれない。
しかし、それは住民がそれぞれに利用料を支払った結果であり、Aさん以外は全員資産を減らしているわけだ。
モノを生み出すわけでなく、単なる消費活動に過ぎない電話ビジネスは、Aさんを除く利用者全員をさらなる貧困へと向かわせているのだ。
Aさんの村全体でいえば資産の総額は変わっていないのに、Aさんに偏ることで一見Aさんが貧困から抜け出たように見えるだけなのである。
その上、Aさんが電話会社に通話料を払い、電話機購入の際の借金を返済していけば、村の資産はトータルでも減っていることになる。