訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2006-09-07

つかみは1バーツ

チェンマイからコラートまで長距離バスで13時間の長旅をしたことがある。
出発時に同席したのがおそらく帰省目的の女子大生。
隣が怪しいオヤジだと長時間落ち着かないだろうなと気の毒に思ったものだが、長距離バスは指定席なので仕方がない。
ここは安心感を抱かせることが親切というものだと決意して、彼女に話しかけてみた。
「ちょっとすみません。教えていただけますか?」
「なんでしょうか」
ここで財布を取り出して、
「これは5バーツですよね、でも、こっちがいくらのコインなのかわからないんです」
「ああ、これは1バーツです。古いコインです。だからタイ数字しかないんですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
これでこちらが外国人、しかもタイに慣れていないということを知った彼女は、自分が教える側になったことで安心したらしく、以後、いろいろ話しかけてくれるようになった。
「学生ですか?」
「いやいや、とんでもない。そんなに若くはないです」
「仕事で?」「う~ん、ま、観光ですね」
「次にバスが休憩所に立ち寄ったとき、バスのチケットで食事ができます。忘れずに持って降りてください」
「それは知りませんでした。ありがとう」

で、休憩所の食堂に入ったときのこと。
先にテーブルに座っていた彼女はしきりにキョロキョロしている。
(誰か探しているのかな)と後ろからしばらく見ていて気がついた。
彼女は不慣れな日本人がちゃんと食事にありつけたか、心配して様子を見ていたのだ。
僕が困っていたら声をかけてくれるつもりだったのだろう。
こういうさりげなく優しいタイ人に会うたび、またこの国が好きになっていく。

(*)左が5バーツ、右が旧1バーツで、こちらがやや大きい。もちろん「の」の字のようなのがタイ数字の「1」であることは当時も知っていた。