訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2009-10-04

ホテルの鍵貸します(1)

コンケーンで、友人のエリーがホテルを紹介してくれたときのこと。
午後からチェックインすると言ったにもかかわらず、「いいから、いいから」と連れて行かれたのは午前9時前。
フロントでは特に断られることもなく手続きを終え、エリーと別れて部屋へ向かった。
時間が時間だけに、案内するボーイもいなかったが、むしろ煩わしくなくてありがたい。
カードキーでロックを解除し部屋に入り、バスルーム前の短い通路に立ったときである。
ベッドは壁で死角になる位置にあったが、わずかに見えるその端に、くるぶしから先の素足が覗いていたのである。
事情はすぐにわかった。
フロントの手違いで、まだ宿泊客のいる部屋に回されたのだ。
昔ながらの鍵ならば、その先客が持っているはずだから、こんなことは起こらないはず。
磁気カードに書き込むだけのカードキーだから、うっかり二重発行してしまったのだろう。
足の主が起きていたのかどうか、部屋への侵入者に気づいたかどうかもわからないまま、音を立てないようにそっと後ずさりして部屋を出た。汗も出た。
室内に特に動きがないことを確かめてからフロントへ引き返し、事情を説明する。
早朝に無理やりチェックインしたのも悪いわけで、別の部屋にしてもらえれば、それ以上文句を言うつもりはない。書き換えられたカードキーをもう一度受け取り、エレベーターで新しい部屋に向かった。
ドアの前に立ってみると、さっきのことがあるからか、開錠するのにちょっと躊躇してしまう。
(まさか、同じミスを二度もするなんてことはないだろうけど)
ドアスコープを逆に覗き込んでみたり、中から物音がしないか耳を当ててみたり。
われながら、これはさすがにバカみたいだな、と苦笑いしながらカードキーをドアのスリットに差し込もうとしたときである。
廊下の向こうから全速力で走ってくるボーイが、大きな声で叫んだ。
「待って下さい! その部屋も違います!!」