訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2010-09-10

跪拝

新しい奨学生は、県外から通ってきているという。
自宅の住所からすると、バスで片道小一時間はかかりそうだ。
学費のほかに通学にも金がかかるということで彼女が選ばれたのかもしれない。
ともあれ、この子が奨学生になることに何の問題も無いので、これで決定。
今後、卒業まで毎年3千バーツ、大学進学がかなったら5千バーツを提供すると伝える。
すでにカラシン先生のことは知らない学年だと思うので、この学校で亡くなるまで教鞭を取っていた先生を記念するものなのだと説明し、他にも大勢の先輩奨学生がいるから金額は少ないんだよと、セコい言い訳も付け加えておく。

一通りの手続きが終わったところで、校長が僕に向かって、奨学金を直接彼女に手渡してやってほしいと言う。
本来、一度通帳に入れてもらいたいのであるが、その授与の様子を写真で記録しておきたいというのである。
すでに別の先生がカメラと三脚を持ってきて、準備まで始めていた。

最近のタイの物価を考えれば、3千バーツはそんな大仰な金額ではないし、それを恩着せがましく手渡してる様子を残されるなんて、むしろ恥ずかしくてイヤだ。
「これは学校に提供したものなので、生徒さんには先生のほうから渡してください」と言って断った。
「それではそうしましょう」ということで、あっさり校長が手渡すところを撮影することになった。
ホッとして見ていると、椅子に座った校長の足元に彼女が跪き、上半身を前に投げ出す。
床に頭が着かんばかりのお辞儀は、僕もこれまでに一度しかされたことが無い、最上級の敬礼「跪拝」だ。
(しまったーー! これをやってもらえるんだったら自分が渡すんだった)
僕の金で彼女からの礼を受けている校長に嫉妬を覚えつつ、こちらはその様子を指をくわえて、ただ横から見ているだけ。

最後に校長から、学校からのプレゼントだといって通学カバンを貰った。
普通のリュックサックだが、学校の名前と紋章が入っている。
それも確かに嬉しいけれど、どうせだったら、やっぱり彼女の跪拝のほうがよかったなあと思ってしまう。
次に同じような機会があったら、絶対に遠慮はしないと心に決めて学校を出たのだった。