訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2011-09-01

グラミン銀行は貧困救済の特効薬か?(6)

【返済率】
グラミン銀行の融資は、その驚異的な返済率の高さから、システム全体が非常に優れているとされる。
なにしろ貧乏人ばかり相手にして98パーセントの返済率だというのだから凄い。
しかし、この高すぎる返済率が逆にアヤシイと思わなければならない。

そもそも開発援助が目的であるなら、その事業の成功をもって融資の成功としなければならない。
単に貸した金が戻ったというだけなら、それこそサラ金と変わらないわけである。

では、98パーセントの返済率にはどんなカラクリがあるのか?

まず、(2)でも書いたグループ制度が、ムラ社会においては、現代の日本人の想像以上に人を縛っていると思われる。
事業に失敗してもまず返す。
借りる前より貧乏になろうとも、とにかく返す。
そうしないと、周りの人に迷惑をかけることになるから。

次に、日本のサラ金でも見られる「借り換え」が考えられる。
結局借金はそのままなのだが、グラミン銀行には返したことになる。
その金は他から借りてくるわけだが、その貸し手の原資がグラミンからの融資、なんていう笑い話みたいな事例も少なくないと聞いている。

もともとグラミン銀行の融資は少額を借りてチマチマ返すというのが基本である。
これは先進国で普通に行われている割賦販売みたいなものと考えたらわかりやすい。
テレビを買って6回払い、次は冷蔵庫で10回払い、次の夏までにはクーラーも買おうか、と日本人なら誰でもやっていることである。
この「月賦」を完済することを借金の返済率としているわけだ。
通常の金融機関による起業者への融資と比べれば、高い数値を示すのは当たり前なのかもしれない。

われわれがクレジットカードを日常生活の中でうまく使っているように、多くの場合、彼らはグラミン銀行から上手に借りて上手に返しているのだろう。
返済率が高いということはシステムが安全に機能していることにはなる。
しかし、その本質は利用者の物欲を刺激し、消費活動を行いやすくすることで、結局は企業や金融機関が儲けるシステムに過ぎないのである。
ローンやクレジットが便利なのは認めるが、それらが貧困地域の生活水準を上げていく助けになっているとは限らない。