訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2011-09-10

グラミン銀行は貧困救済の特効薬か?(10)

【融資の対象】
グラミン銀行は貧しい人ほど歓迎する、というのがカンバンである。
女性であれ、障害者であれ、前職が乞食であっても積極的に融資をおこなう。
これをして、グラミン銀行が弱者の自立を積極的に支援していると普通は思ってしまう。
しかし、ここにも問題はある。

そもそもユヌス氏が女性ばかりに金を貸すのは、女性のほうが返済率が高いからだと自身述べている。
最初は男性にも融資したが、それでは商売にならなかったというわけだ。
つまり、グラミン銀行の融資は、相手が弱者だからということでは選ばれない。
起業家としてのやる気と資質が問題になるのである。
だから、「うまくやっていける者」であるなら、女性であっても乞食であっても歓迎する、というのが正しい解釈となる。
これは裏を返せば、うまくやっていけない者には金は貸せない、ということだ。

一見、最底辺の人たちを救済しているように見えて、実は結構キビシイのがグラミン銀行の融資である。
「機会を与えるから、あとは自力でここまで登ってきなさい」と資本主義社会での成功者は言う。
だが、誰もが成功はしないのが資本主義である。
ユヌス氏はバングラデシュの雇われ人は搾取されるだけだから自営になるのが一番簡単なのだと言うが、「1億総社長サン」はいくらなんでもあり得ない。
当然のことだが、大きな責任を負うより、人のもとで働くほうが性に合ってるって人も多いのだ。
食うに困らなければそれでいい、金が余ればギャンブルでもやろか、というダメ親父だっているのだ。
そんな人たちでも、それなりの労働にはそれに見合った報酬が得られるようにすることこそが大切なのではないだろうか?

パナソニックの創業者は、どんなに経営が厳しい時でも、末端の従業員、系列の販売店員、さらにはその家族にいたるまで、ダメ社員もいることを許容したうえで、そのすべての生活を守ろうとしたという。
日本式終身雇用制にも問題点はあろうが、被雇用者であっても生きがいを持って働ける社会なら生産性も上がり、生活も向上するのではないか。
日本の発展はそうしてなされてきたはずだし、「1億総中流」という奇跡的成功例を示したのである。

一方グラミン銀行は、社長サンになれた人だけ取り上げてサクセスストーリーを宣伝する。
しかし、それは取り残された多くの人々については触れない、一面だけの物語なのである。