訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2008-09-23

いきなり父の日(5日目)

話が一区切りついたところで、四女が突然立ち上がり、家の中に入っていった。
何かプレゼントがあるらしい、と先生が教えてくれた。
すぐに出てきた彼女が持っていたのは、小さな安っぽい紙製の造花のブローチである。
(なんだ、期待させといて。これはまた、えらく子供騙しな贈り物じゃないか。っていうか、その辺にもっとましな物は無いのか?)
拍子抜けしていると、そばに寄ってきてシャツの胸にピンで留めてくれようとする。
そんなもの照れくさいばっかりなのだが、仕方が無いので我慢してつけて貰う。
留め終わったら、四女はいきなり一歩下がって這いつくばり、頭を床につけるようなお辞儀をした。
(何だ、これまた大袈裟な)
このときは何がなんだか、さっぱりわからなかったのである。

事情が分かったのは帰りの車中でだった。
車に乗って、さっさとブローチを外していると、そこに貼られた小さなシールに「ラック・ポー・クルン」と書かれているのを見つけた。
「ずっとお父さんを愛しています」
どうやら、このブローチは父の日グッズらしい。
タイの父の日は12月5日である。
四女は町で売られていた父の日グッズの中からこれを買い、僕が来るまで半年間、ずっとしまっていたことになる。
そうすると、さっきの跪拝は父の日の正式な作法に則った儀式だったか。
このとき、父親も子供の健康と成長を喜ぶ、それなりの仕草があるのだが、悲しいかな、鈍い日本人は無愛想に座っていただけなのであった。

彼女の父親は数年前に病気で亡くなっている。
父の日に実父の代わりとして僕のことを思い出してくれたのだ。
(そうか、父の日だったか。父さん、、か)
今になって涙が出そうになり、我慢して車を走らせるのに苦労した。