訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2011-11-21

恥の泥団子

タイの洪水ニュースの中で、首相も率先して川を浄化する泥団子を投げ入れている様子が映し出されていた。
いわゆるEMボールというやつで、有益な菌類を練りこんだ泥団子を川に投げ込めば、みるみる水質が浄化されるというものである。
そのために大勢のボランティアが団子作りに精を出しているとのこと。
国を守るためにどんなことでもやろうというその姿はまさに感動もので、見ていて涙が出そうなくらいであった。
ただ残念なことに、彼らの努力は何の成果も上げることは無いのである。

タイの知人がメールでこのEMボールの効果を尋ねてきた。
これはまったくの疑似科学であって、提唱者が言うような効果は全然期待できないこと。
そもそもその効能自体が非科学的で、成功例として挙げられている事例そのものがほとんど捏造といってもいいくらい胡散臭いこと。
タイで実行している人たちの行為には敬意を払うが、少なくとも首相はもっと別のことを考えるべきじゃないか。
などなどを恐る恐る告げたところ、タイでもチュラ大の教授だかが批判的意見を公表していると言っていた。
その知人もそういったルートから怪しいと思い始めていたので、僕の意見を素直に聞いてくれたが、それでもボランティアの作業者を説得して中止させるということは難しいのだと言う。

大災害に際して、さまざまな風説が流れることはどこの国でも同様。
中には無駄な努力や逆効果なんてのもあるだろうけど、混乱の中ではそれもある程度仕方がないと思う。
しかしこの件で悔しいのは、追い詰められたタイ人がこのインチキ団子に飛びついた理由として、これが日本で公害対策に用いられて大きな成果を挙げたからだと言われている点だ。

実は、日本ではこのインチキ団子を環境教育の一環として取り入れている学校まであるというのだ。
多くの子供たちが汚れた川をきれいにするという目的で、どっちかって言うと川を汚す行為を繰り返しているのである。
一方で、材料を売っている連中は大儲け。
世の科学者連中は、もっとこういった似非科学に厳しい態度を示さなければならないんじゃなかろうか?
次代を担う子供たちや、災害に苦しむ途上国の住民を騙くらかして、どれだけ彼ら環境ヤクザが儲けているのであろうか。
自分の家を後回しにしてまで首都の衛生環境を守ろうとしているバンコクのボランティアたちのことを思うと、同じ日本人として恥ずかしいかぎりなのである。