訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2010-11-21

工作

ノンカイにある学校の中等部で、持参した望遠鏡の工作教室をおこなった。
日本では手間と時間のかかる本格的なセットを用意するが、タイでは簡易な市販の組み立てキットを使うことにしている。
理論的な説明ができるような語学力は無いし、そもそもキットを人数分用意することもできない。
そこで、せめて時間いっぱい楽しんでもらおうと、それなりにいろいろ工夫することになる。
要するに、ウケを狙うということ。

数が足りないので、一台の組み立てを何人かで交代してやってもらうことになるのであるが、一番難しいのはボディにシールを巻きつけるところである。
「次にここをやってくれる人は?」
「はい、はいっ、はーい!」と何人もが立候補する。
たいがいクラスに一人はお調子者がいるわけで、その難しい部分をあらかじめ見当をつけていた男子にさりげなく押し付ける。
同時に、別のキットではいかにも器用そうな女の子を選んで同じところをやらせる。
男子が先走って自己流に作業しているのを横目に確かめながらも、わざと気がつかないふりで、女の子の作業が失敗しないようにアドバイスする。
「はい、よくできました。きれいですよ」
そこで振り返って、初めて彼のシワシワの失敗作を目にして大げさに驚いてみせるのである。
「何だっ、これはー!?」
こちらの反応に生徒たちは大笑いである。
笑いを取るために生贄を使うのは三流であると承知の上だが、最も確実な手法でもある。
彼は彼で自分の役割をわきまえていて、ちゃんとこちらの期待通りの反応をしてくれる。
詰め寄ると体をかわして逃げ回り、あげくに廊下まで飛び出して行く。
鬼ごっこの末に捕まえた彼を、羽交い絞めにして教室まで引きずって帰る。
全員、工作そっちのけで大爆笑。
これも実は、彼の方からちょうどよいタイミングでわざと捕まっているのである。見込んだとおり、センスのある奴だ。
再び工作に戻って、またしばらく作業を続けた後、
「えーっと、じゃあ次の作業は誰にやってもらおうかな、、、」
まわりを見回した後、再び彼と目を合わせ、一呼吸置いてから、
「お前には二度とやらせるかあーー!」
大きな声に、またまた全員で大笑い。

大騒ぎの工作教室を無事に終えて、学校を出て行こうとしたら、数人の女の子が駆けて追いかけてきた。
手を合わせて腰を落とした後、恥ずかしそうに握手を求めてくる。
タイ人は基本的に握手をしないので、こういうのは特に嬉しい。
実はこの学校、2年前に三男が卒業してしまっていて、現在はウチの子が通っているわけではない。
腰痛を抱えてドタバタしたことを後悔しつつも、でも楽しかったからまた来年も来ようか、なんて思いながらウドンの町へ戻っていった。

2010-11-01

忘物

五女とその友達を大学の寮まで送り届け、来年の再開を約束して別れた。
歩いていく二人が見えなくなってから、ジュースを買うために近くのコンビニに入る。
ペットボトルをあらかじめホテルの冷蔵庫で凍らせておくのである。
移動の車内で、凍ったオレンジジュースを融けただけずつ飲んでいくと、ちょうど半日もつというわけ。
夜食用のスナック菓子なども買い込んで車に戻り、長い一日もあとはホテルで眠るだけ、と思った瞬間である。
助手席のシートに挟まるようにして半分だけのぞいている五女の携帯電話が目についた。
あのバカは命より大事なケータイを忘れてっちゃったのか!

さっそく五女に連絡して、、、、と思ったところで気がついた。
電話がここにあるって事は連絡のつけようがないじゃないか。
しかたなく携帯電話を持って、車を降り、近くの建物に向かう。
といっても、大きな建物がいくつもあり、そのうちのどれが寮なのかすらわからない。
行ったり来たりを繰り返したあげく、足で見つけ出すことは不可能と判断。
あとはこの電話で適当な履歴なりにかけ、でてくれた相手に事情を説明するしかない。
たぶん、ほとんどが大学の友人だと思うので、何とかしてくれるであろう。
問題は、電話の相手が不審がって切ってしまう前に、事情を手際よく説明できるかどうかである。
ドキドキしながら、電話を手にとって、電話帳の表示のしかたを調べようとしたときだった。
前方からやってくる二人乗りのスクーターを見ると、運転しているのは五女ではないか。
さっきの友人を送って行くところらしい。
急いで呼び止めると、きょとんとしている。
電話が無いことに、まだ気がついていないようだ。
黙って差し出すと、すごく驚いていた。
「ばかやろー、×○※△☆、、、、」
どうしたらいいかと、さんざん悩まされていたので、思いつく限りの悪態をついてやった、もちろん日本語で。
意味不明なことを叫びながら、叩いたり、首を絞めたりする僕に、どれだけ困らせたかを少しは理解したらしい。
100メートルほど先の車まで、バイクの後ろに乗せていってくれるという。
近いからいいよと言っても強引に誘うのは、彼女なりに悪かったと思っているのだろう。
二つ返事で後部シートの友人と交代し、ちょっとだけタンデム。

子供たちとは、「さよなら」が即ち一年間のお別れなわけで、毎度とてつもなく寂しいのである。
だから、直後にもう一度会えたことが、本当は嬉しくて興奮しちゃったわけ。
「バイクに乗せてもらっちゃった」
それだけで、ホテルまでの道中、ずっとニヤニヤしながら車を走らせたのである。