工作
ノンカイにある学校の中等部で、持参した望遠鏡の工作教室をおこなった。
日本では手間と時間のかかる本格的なセットを用意するが、タイでは簡易な市販の組み立てキットを使うことにしている。
理論的な説明ができるような語学力は無いし、そもそもキットを人数分用意することもできない。
そこで、せめて時間いっぱい楽しんでもらおうと、それなりにいろいろ工夫することになる。
要するに、ウケを狙うということ。
数が足りないので、一台の組み立てを何人かで交代してやってもらうことになるのであるが、一番難しいのはボディにシールを巻きつけるところである。
「次にここをやってくれる人は?」
「はい、はいっ、はーい!」と何人もが立候補する。
たいがいクラスに一人はお調子者がいるわけで、その難しい部分をあらかじめ見当をつけていた男子にさりげなく押し付ける。
同時に、別のキットではいかにも器用そうな女の子を選んで同じところをやらせる。
男子が先走って自己流に作業しているのを横目に確かめながらも、わざと気がつかないふりで、女の子の作業が失敗しないようにアドバイスする。
「はい、よくできました。きれいですよ」
そこで振り返って、初めて彼のシワシワの失敗作を目にして大げさに驚いてみせるのである。
「何だっ、これはー!?」
こちらの反応に生徒たちは大笑いである。
笑いを取るために生贄を使うのは三流であると承知の上だが、最も確実な手法でもある。
彼は彼で自分の役割をわきまえていて、ちゃんとこちらの期待通りの反応をしてくれる。
詰め寄ると体をかわして逃げ回り、あげくに廊下まで飛び出して行く。
鬼ごっこの末に捕まえた彼を、羽交い絞めにして教室まで引きずって帰る。
全員、工作そっちのけで大爆笑。
これも実は、彼の方からちょうどよいタイミングでわざと捕まっているのである。見込んだとおり、センスのある奴だ。
再び工作に戻って、またしばらく作業を続けた後、
「えーっと、じゃあ次の作業は誰にやってもらおうかな、、、」
まわりを見回した後、再び彼と目を合わせ、一呼吸置いてから、
「お前には二度とやらせるかあーー!」
大きな声に、またまた全員で大笑い。
大騒ぎの工作教室を無事に終えて、学校を出て行こうとしたら、数人の女の子が駆けて追いかけてきた。
手を合わせて腰を落とした後、恥ずかしそうに握手を求めてくる。
タイ人は基本的に握手をしないので、こういうのは特に嬉しい。
実はこの学校、2年前に三男が卒業してしまっていて、現在はウチの子が通っているわけではない。
腰痛を抱えてドタバタしたことを後悔しつつも、でも楽しかったからまた来年も来ようか、なんて思いながらウドンの町へ戻っていった。
日本では手間と時間のかかる本格的なセットを用意するが、タイでは簡易な市販の組み立てキットを使うことにしている。
理論的な説明ができるような語学力は無いし、そもそもキットを人数分用意することもできない。
そこで、せめて時間いっぱい楽しんでもらおうと、それなりにいろいろ工夫することになる。
要するに、ウケを狙うということ。
数が足りないので、一台の組み立てを何人かで交代してやってもらうことになるのであるが、一番難しいのはボディにシールを巻きつけるところである。
「次にここをやってくれる人は?」
「はい、はいっ、はーい!」と何人もが立候補する。
たいがいクラスに一人はお調子者がいるわけで、その難しい部分をあらかじめ見当をつけていた男子にさりげなく押し付ける。
同時に、別のキットではいかにも器用そうな女の子を選んで同じところをやらせる。
男子が先走って自己流に作業しているのを横目に確かめながらも、わざと気がつかないふりで、女の子の作業が失敗しないようにアドバイスする。
「はい、よくできました。きれいですよ」
そこで振り返って、初めて彼のシワシワの失敗作を目にして大げさに驚いてみせるのである。
「何だっ、これはー!?」
こちらの反応に生徒たちは大笑いである。
笑いを取るために生贄を使うのは三流であると承知の上だが、最も確実な手法でもある。
彼は彼で自分の役割をわきまえていて、ちゃんとこちらの期待通りの反応をしてくれる。
詰め寄ると体をかわして逃げ回り、あげくに廊下まで飛び出して行く。
鬼ごっこの末に捕まえた彼を、羽交い絞めにして教室まで引きずって帰る。
全員、工作そっちのけで大爆笑。
これも実は、彼の方からちょうどよいタイミングでわざと捕まっているのである。見込んだとおり、センスのある奴だ。
再び工作に戻って、またしばらく作業を続けた後、
「えーっと、じゃあ次の作業は誰にやってもらおうかな、、、」
まわりを見回した後、再び彼と目を合わせ、一呼吸置いてから、
「お前には二度とやらせるかあーー!」
大きな声に、またまた全員で大笑い。
大騒ぎの工作教室を無事に終えて、学校を出て行こうとしたら、数人の女の子が駆けて追いかけてきた。
手を合わせて腰を落とした後、恥ずかしそうに握手を求めてくる。
タイ人は基本的に握手をしないので、こういうのは特に嬉しい。
実はこの学校、2年前に三男が卒業してしまっていて、現在はウチの子が通っているわけではない。
腰痛を抱えてドタバタしたことを後悔しつつも、でも楽しかったからまた来年も来ようか、なんて思いながらウドンの町へ戻っていった。