メールアドレス(5日目)
時間の限りゆっくり話をしたいのであるが、友達が同席していると、どうしてもそちらに気を使ってしまって落ち着かない。
しかし、タイではこれが当たり前で、普通の女の子が一人だけで男性と会うことはありえない。
大学生といっても、そこはきちんとしていて、五女の友達も黙ってずっと付き合ってくれている。
もちろん、彼女が同席することについて僕に許可を求めたりもしないし、先方も居心地が悪いということはなさそうだ。
こちらが勝手に申し訳ないと思っているだけなのであるが、こればかりはなかなか慣れるものではない。
「大学生になったんだから、メールアドレスを持たされてるんじゃないのか?」
電話が無くても、電子メールで連絡が取れれば便利だと思って尋ねてみた。
「はい、持っています」
その応えは予想通りだったのだが、「じゃあ、ここに書いて」と渡したメモ用紙に五女が書き込んだアドレスには驚かされた。
ほんの一瞬躊躇した五女が書きだしたメールアドレスは、なんと彼女の名前に僕の姓を続けたものをアカウントとしていたのである。
五女の名前はわりとありふれたものなので、それだけだと、すでに別の人がアカウントを獲得しているのは間違いない。
で、普通は誕生日とかの数字や好きな言葉を追加して新しく固有のアカウントを作るのであるが、そこに僕の苗字を取り入れたわけだ。
これでは似たようなアカウントすら絶対に存在しないだろうけども、使われた当人にとっては、なんだか妙に嬉しいやら恥ずかしいやら。
残念なことに、この嬉しさを表現することが日本の中年男にはできないのである。
「あ、そうなんだ」とそっけなくメモをしまい込み、その件にはそれ以上ふれなかった。
もっとも、あとでそのメモを何度も取り出して眺めては、いつまでもニヤついていたのであるが。
しかし、タイではこれが当たり前で、普通の女の子が一人だけで男性と会うことはありえない。
大学生といっても、そこはきちんとしていて、五女の友達も黙ってずっと付き合ってくれている。
もちろん、彼女が同席することについて僕に許可を求めたりもしないし、先方も居心地が悪いということはなさそうだ。
こちらが勝手に申し訳ないと思っているだけなのであるが、こればかりはなかなか慣れるものではない。
「大学生になったんだから、メールアドレスを持たされてるんじゃないのか?」
電話が無くても、電子メールで連絡が取れれば便利だと思って尋ねてみた。
「はい、持っています」
その応えは予想通りだったのだが、「じゃあ、ここに書いて」と渡したメモ用紙に五女が書き込んだアドレスには驚かされた。
ほんの一瞬躊躇した五女が書きだしたメールアドレスは、なんと彼女の名前に僕の姓を続けたものをアカウントとしていたのである。
五女の名前はわりとありふれたものなので、それだけだと、すでに別の人がアカウントを獲得しているのは間違いない。
で、普通は誕生日とかの数字や好きな言葉を追加して新しく固有のアカウントを作るのであるが、そこに僕の苗字を取り入れたわけだ。
これでは似たようなアカウントすら絶対に存在しないだろうけども、使われた当人にとっては、なんだか妙に嬉しいやら恥ずかしいやら。
残念なことに、この嬉しさを表現することが日本の中年男にはできないのである。
「あ、そうなんだ」とそっけなくメモをしまい込み、その件にはそれ以上ふれなかった。
もっとも、あとでそのメモを何度も取り出して眺めては、いつまでもニヤついていたのであるが。