訪チャイ雑記

プラン・インターナショナルなどの援助事業を通じて知り合ったタイの子供たちを訪ね歩くチャイルド訪問旅行。その際の出来事などを書きなぐった、あくまで個人的な覚え書きです。万一、同志の参考にでもなれば嬉しいですが、責任はとれません。 質問等もコメントでご遠慮なくどうぞ。

2009-10-24

頭文字d

プランのプロジェクト見学を終えて、事務所に戻ったのがちょうど午後の3時。
この日のうちにサコンナコンまで移動しておくのが当初からの予定である。
プランのあるシーサケートからサコンまでは、昨年、平地ルートで東回りに「コ」の字型に走って、350キロ、4時間半かかっている。
ただし、このときはシーサケートを午前4時に出発しているので、今回のように夕方だともっとかかるはずである。
5時間で到着したとして、午後の8時過ぎ。
五女の家をいきなり訪問するには微妙な時刻である。
そこで時間短縮のため、今回は直線山越えルートを検討してみた。
距離はかなり短くなるはずだし、信号・渋滞も少ないはずである。
ただ気になるのは、西側からの山越えルートは急な坂道のヘアピンカーブが続く難所だということである。
もし、今回の中央ルートも同様の道だとすると、前をダンプやバスにふさがれるたびに、大きなロスを生じてしまう。
さらに、この地方の道が未舗装だったりすると、これはもうどうしようもない。
真っ赤な龍角散のような砂埃が立ちこめるなか、ボコボコの道を舌を噛まないように徐行するしかないのである。
というわけで、不安材料も多かったが、どうしても五女の実家に立ち寄らなければならなかったので、強行突破することに決定。
すぐにでも出発したかったが、山道で迷うとすぐに1時間ぐらい無駄にしてしまうので、まずプランの事務所でパソコンを広げさせてもらい、電子地図で完全にコースを定めてからスタートすることにした。
20分ほどかけて、「何キロ走って右。何キロ走って左、、、」というメモをノートに書きなぐってプラン事務所を後にする。
念のためにパソコンも助手席で起動したままにしておく。
山道に入るまではそれなりに時間がかかったが、意外だったのは、狭い山道もすべてちゃんと舗装されていたこと。
そこそこカーブがあるものの、道をふさぐバスのルートではなさそうである。
自慢じゃないが、日本では毎日、自宅から片道45キロの道のりを山のてっぺんにある職場まで通っているのだ。
峠の走りに関しては、少なくとも十分な経験を積んでいる。
同乗者がいればできないような走りで思いっきり突っ走る。

2009-10-07

ホテルの鍵貸します(2)

コンケーンのホテルでひどい目にあった翌年、今度はエリーとルーイ県まで行くことになった。
彼女は友達の家に泊まる予定で、僕も一緒にと誘ってはくれたのだが、宿泊費を少しばかり節約することと旅先での自由を引き換えにする気は毛頭無い。
近くのホテルに泊まって翌朝迎えに行くからということで納得してもらい、彼女の友達、ニットの案内でホテルへ向かった。
まだ出来たばかりの小さなホテルで、内装もきれいだし、従業員も感じがいい。
オーナーと思しき人物が自ら部屋まで案内してくれた。
泊まるのは僕一人であるが、エリー、ニットを引き連れて、総勢4名が狭い部屋に入り、さあ荷物を置こう、としたときである。
全員の目がテーブルの上に集中し、一斉に黙り込んでしまった。
そこには大きなリュックサックが置かれていたのである。
もちろん、僕はこの状況を一瞬で理解した。
去年と同じことが起きたのである。
幸いにして、この部屋の宿泊客は、どこかへ外出中だったらしい。
タイ人3人が手短に言葉をかわしたあと、何にも触れないようにして全員でそっと廊下に出る。
一人笑っているのはエリーである。
「あなた、去年もこんなことがあったんだよね?」
まるで僕のミスであるかのようにおもしろがっているが、こちらとしては、エリーがホテルについてくると、決まってこんなことになるわけで、彼女のほうこそが疫病神に思えてしまうのである。

悪意の有る無しにかかわらず、タイのホテルは油断しちゃいけないということに気づかされたわけで、それからというもの、一人で部屋にいるときはドアチェーンも掛ける、外出するときは貴重品を残していかない、といったふうに、旅の心得の基本を忠実に実行するようになったのである。

2009-10-04

ホテルの鍵貸します(1)

コンケーンで、友人のエリーがホテルを紹介してくれたときのこと。
午後からチェックインすると言ったにもかかわらず、「いいから、いいから」と連れて行かれたのは午前9時前。
フロントでは特に断られることもなく手続きを終え、エリーと別れて部屋へ向かった。
時間が時間だけに、案内するボーイもいなかったが、むしろ煩わしくなくてありがたい。
カードキーでロックを解除し部屋に入り、バスルーム前の短い通路に立ったときである。
ベッドは壁で死角になる位置にあったが、わずかに見えるその端に、くるぶしから先の素足が覗いていたのである。
事情はすぐにわかった。
フロントの手違いで、まだ宿泊客のいる部屋に回されたのだ。
昔ながらの鍵ならば、その先客が持っているはずだから、こんなことは起こらないはず。
磁気カードに書き込むだけのカードキーだから、うっかり二重発行してしまったのだろう。
足の主が起きていたのかどうか、部屋への侵入者に気づいたかどうかもわからないまま、音を立てないようにそっと後ずさりして部屋を出た。汗も出た。
室内に特に動きがないことを確かめてからフロントへ引き返し、事情を説明する。
早朝に無理やりチェックインしたのも悪いわけで、別の部屋にしてもらえれば、それ以上文句を言うつもりはない。書き換えられたカードキーをもう一度受け取り、エレベーターで新しい部屋に向かった。
ドアの前に立ってみると、さっきのことがあるからか、開錠するのにちょっと躊躇してしまう。
(まさか、同じミスを二度もするなんてことはないだろうけど)
ドアスコープを逆に覗き込んでみたり、中から物音がしないか耳を当ててみたり。
われながら、これはさすがにバカみたいだな、と苦笑いしながらカードキーをドアのスリットに差し込もうとしたときである。
廊下の向こうから全速力で走ってくるボーイが、大きな声で叫んだ。
「待って下さい! その部屋も違います!!」